「……俺もお前も、糞みてぇなとこに生まれたよな」


その言葉だけが、やけに優しく響いた。
私は、何も言えずに、ただ頷いた。

レオくんが不器用に笑って、私の頭をくしゃくしゃと撫でる。


「……俺の家、来たの……お前が初めて」

「……そっか」


レオくんの“初めて”に、私がなれたんだ——。

それだけで、どうしようもなく胸がじんわりして、喉の奥がつまる。

これはきっと、私しか知らないレオくんだ

この部屋の匂いも、不器用な笑顔も、優しく撫でる手も。全部

……私だけの、レオくん

言葉にしたら壊れてしまいそうで、何も言えなかったけれど――
それでも、嬉しくて、嬉しくて。胸がいっぱいだった。
 

帰り道。夜はもう完全に落ちていて、街灯がぽつぽつと灯っていた。
歩き出したとき、何も言わずにレオくんが手を繋いできた。

それが、まるでずっと前からの約束みたいに自然で。
私は、その温度を、ぎゅっと握り返した。