言い終えたその瞬間だった。


「……っは、あは、っははっはははっ!!」


レオくんが、急に腹を抱えて笑い出した。

最初は小さく笑ってるのかと思ったけど、それはすぐに止まらなくなった。
体を仰け反らせるようにして、肩を揺らしながら、喉を鳴らして、むせ返るみたいに笑っている。

まるで、ずっと抱えてたものがどっと溢れたみたいに。
ツボに入ったとか、同情だとか、そんなものじゃない。
本気で——どうしようもなくて、心底おかしくて仕方ないって顔だった。
でも、レオくんの笑いにはどこか棘がなくて、それが逆に、ちょっとだけ救いだった。

私も、目を伏せて小さく微笑んだ。
ずっと気にしてたことは、レオくんにとって笑い事なくらい、小さなことなんだ。
心がすっと軽くなる。


「ひっでえな。マジで、絵に描いたようなクソ家族じゃん。……はー、笑った」

「……レオくんの家は?」


そっと聞き返すと、レオくんは動きを止め、しばらく黙ってから、低い声で言った。


「見たまんまだよ。俺んとこも大概だし。親の顔なんて忘れるくらい、見てねぇ。勝手に金置いて、勝手に消えてる」


なんてことのないように話すけど、顔からは感情の気配がまるごと消えていた。
でも、その奥にある何かが、なぜか胸を締めつけた。

私は、言葉もなくレオの肩にそっと腕を回した。