また新しい一本に火をつけて、煙を吐く。
それだけ。

私の問いかけは、まるで壁に吸い込まれたみたいに、何の形も残さない。
沈黙だけが、部屋いっぱいにじわじわと広がっていく。

このまま帰ったほうがいいのかな。
急に、そんな考えが浮かぶ。

さっきまで触れていた体温が、もう遠くのことみたいで。
ベッドに座ったまま、膝を抱えそうになる。
寒くはないのに、なんだか身体が縮こまってしまう。

それでも、まだここにいたいと思う自分もいて——
言葉を選んでいるうちに、喉の奥が詰まりそうになる。


「……お前の家って、どうなん?」


レオくんの声が、不意に落ちてきた。


「……えっと」


咄嗟のことに言葉が詰まる。
どう言えばいいのか、そもそも話していいことなのか、わからなかった。
でも、レオくんに秘密にするようなことでもない気がして……。
悩んだ末に、私は重たい口を開いた。


「りょ、両親、どっちも浮気してて。中学生のとき、ばれちゃって……今はお母さん閉じこもってて。お父さんももう何か月も帰って来なくて……。でもお父さん、帰ってくると八つ当たりされるから、いいかなって。……それで、えっと、家、あるのに空っぽな感じ、かな」


ぽつり、ぽつりといつ止められるかわからない不安のまま、話すうちにあの家を思い出す。
昔は、幸せだった……気がする。誕生日もお祝いしてくれて、いつからこんなふうになったんだっけ?
朝起きても挨拶はなくて、食事も顔を合わせることなんてなくて。

それを「家族」と呼んでいいのか、今はわからない。