そして週末。
私は鏡の前で何度も服を合わせて、でもどれもしっくり来なくて。結局、制服にカーディガンを羽織るだけで、家を出た。

着いてすぐ、レオくんは私の格好に特に何か言うわけでもなく、「来い」とだけ言って、やっぱり何も説明せずに私の手を引いた。
駅をいくつも乗り継いで、見知らぬ住宅街の奥へ。レオくんの横顔はずっと無表情で、またなにかしてしまったのか心配になり、何も聞けなかった。

着いたのは、大きな家だった。広い庭に、立派な門、けど……どこか古びていて、手入れが行き届いていない印象。
レオくんは無言で門を開けて、勝手に玄関のドアを押し開ける。


「……あの、ご挨拶とか」

「いい」


つっけんどんな声に、何も言えなくなる。

妙に静かな廊下を抜けて、階段を上がり、レオくんの部屋へ通される。

思っていたより広いその部屋は、でも、なんだか寒々しかった。
カーテンは半分外れかけ、机の上には大量の吸い殻と飲みかけの缶。脱ぎっぱなしの服が床に散乱していて、ベッドはシーツがずれたままで、そこだけが使われている様子だった。

殺風景な自分の部屋を、思い出し、こんなとこまで正反対なんだ。そう思った。

でも、ふ、と香ったレオくんの匂いに思考が止まる。
煙草の煙と、香水と、なんてことない男の子の体温みたいな匂いが、部屋いっぱいに染みついていて――胸がじんわりと熱くなる。

私、今、レオくんの”日常”に触れたんだ。
誰かの特別になるのって、こういうことなのかな。