レオくんは、彼を捨てるように手を離した。
まるで、もう用はないとでも言うように。

ゆっくりと私の方へ歩いてくる。足音がやけに大きく響いた。


「なぁ」


聞いたことのない低い声が落ちた、次の瞬間。


「……っ!」


私はレオくんに胸ぐらを掴まれていた。ぶちっと、ワイシャツのボタンがちぎれる音が、他人事のように聞こえる。
痛みと苦しみに、息が詰まる。
それでも、レオくんは私なんて気にせず、壁に押し付けてくる。


「いた……っ!?」

「おい、ブス」


まつ毛がぶつかるくらい、顔を近づく。
間近で目を合わせられて、逸らすことは、許さないと言われているようだった。

今まで、こんなレオくんは見たことなかった。
この人は、本当にレオくんなの?


「ビッチごっこは楽しかったか?……他の男に尻尾振ってさぁ。お前、俺の”彼女”だよな?違う?だったら、なに馴れ馴れしく話してんの」


刺すような強い言葉に、肩が震える。
恐怖で、涙が勝手にあふれる。


「れ、れおくん……」


声が震えてうまく出ない。


「うるせぇ」


耳元で呟かれたその声に、頭が真っ白になる。