「ヨリさん……今、幸せですか?」
心臓が、跳ねた。
「……え」
「ごめんなさい、でも……ずっと考えてた。あの日、あんなふうに怯えた顔で走っていくヨリさん見て、そのあとも急に辞めちゃって……今こうして、会いに来たけど……やっぱり、幸せそうには見えない」
胸の奥を、ぎゅっと鷲掴みにされる感覚。
佐久間くんは、優しい目で私を見つめていた。
でも、その瞳の奥には強い怒りも宿っていた。
「……どうして、何も言ってくれないんですか」
「……なにが……」
「ヨリさん、閉じ込められてるんじゃないですか。本当は、助けてほしいって思ってるんじゃないんですか」
違う。違う、そんなことはない――と言おうとして、言葉が出てこなかった。
「誰かに支配されて、縛られて、それが“愛”だなんて言わないでください。
……俺なら、そんな思いさせない。
ヨリさんのこと、大事にしたいって思ってる。ちゃんとした言葉で、ちゃんと向き合って……守りたいって思ってるんです」
その言葉は、眩しかった。
眩しすぎて、憎いとすら思った。
佐久間くんの言葉は、あまりにも正しくて、まっすぐで……だからこそ、私の胸を抉ってくる。
