「……え?」


言葉の意味がすぐに理解できなかった。
けれど、レオは真剣な顔で私の目を見ていた。


「バイトも、全部やめて。買い物も、連絡も、俺が一緒。……ヨリは家で、俺のことだけ考えてて」

「……そんな、こと……」


なにか言いかけたけど、うまく言葉が出なかった。
レオの目が、あまりにも優しくて、真っすぐで――逃げられなかった。


「外って、怖いじゃん。……俺がいないと、またひどい目に遭うかもしれない。誰かに奪われるかもしれない。……ヨリ、壊れちゃうかもしれない」


それを防ぐためだって。
お前を守るためだって。
レオの口から出るすべての言葉が、甘い毒のように私の脳を痺れさせる。


「……俺、ヨリが痛い思いするの、もう見たくないの。……ね、わかった?」


レオの手が、私の頬に添えられる。
傷に触れないように、優しく。……でも、その手の優しさは、逃げ場を奪う鎖みたいだった。


「……うん。……わかった」


そう言った自分の声は、他人みたいだった。
頭のどこかでは「まずい」と思ってるのに、
心は「安心してる」って――そう囁いてる。

レオはそれを聞いて、子供みたいに嬉しそうに笑った。


「……大好きだよ、ヨリ。世界で一番、俺が愛してる」


私は微笑み返すことしかできなかった。
まるで、それ以外の選択肢が最初からなかったみたいに――。