「みぃつけた」
一番聞きたくない、聞きなれた声が、カフェの裏口の通路に響いた。
恐る恐る、振り向くとそこに立っていたのは——彼だった。
目元は泣き腫らしたように赤く、顔面は蒼白、なのに瞳だけは爛々と鈍い光を放っていた。
レオは私を見て嬉しそうに微笑んだあと、佐久間くんを、正確には佐久間くんに抱き留められている私を見て無表情になり下を向き頭を掻きむしる。
「……何してんの。そういうの、まじで無理なんだけど」
「なんで」
「どうして」
「ヨリ」
そのあいだ、私は声をかけることもできず、動くこともできなかった。
やがて満足したのかレオは掠れた声と一緒に顔を上げた。
「あー……。うん」
その顔は笑っているのに、目が死んでいた。
昔のレオを彷彿とさせる、この世の誰よりも怒っているときの、彼の顔だった。
「ヨリ、俺のこと、捨てるの?」
低い声がゆっくりと一歩、私に近づいてくる。
「落ち着いてください……!ヨリさんが怖がって」
佐久間くんが私の名前を呼んだとき、こちらに伸ばされていた手がピクリと震え
「お前、誰?……てかお前に関係なくね?」
彼の声が一段と低くなった。
