今だって、目の前の佐久間くんより今もなお、鳴っているスマホの相手——レオのほうが気になっているのに。
「んー、と。ヨリさんもう終わりだよね？」
何も答えない私に、佐久間くんは特に苛立った様子も見せず、頬を搔きながら話を変えた。
私なんかよりもよくできた彼に、静かに頷くと少し間を置いてから、意を決したように口を開いた。
「よかったら、送っていきます！最近暗くなるのも早いし！あ、別に下心があるとかじゃなくて……ってごめん。なに言ってんだ俺」
矢継ぎ早に話す様子に圧倒される。
でも私は返事が決まっていた。
「……ごめんなさい。……迎えが、あるから」
「そっ、か。じゃ、じゃあ外まで！一緒にいきましょ！」
「わかり、ました」
準備してくるよ！と言って更衣室へ去っていった彼を見送ったとき、ブーと一際強くスマホのバイブ音が響いた気がした。
まるで監視されているみたい……自分でもありえないことを思った。
でも、あのレオの様子から、絶対にないなんて言うこともできない。
荒くなる呼吸をなんとか抑えて、今度こそスマホを起動した。
そこにあったのは分刻みの不在着信とおびただしい数のメッセージだった。
『ヨリ』
『なんで電話でないの』
『声が聞きたい』
『どうして返事してくれないの』
『なぁ』
『誰といんの？』
