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「……ありがとうございました」
最後のお客様を見送り、帰る準備をしながら休憩室で一息つく。
今日は忙しい日だった。休憩時間もろくに取れないほどに。
仕事中、ポケットの中で何度も震えていたスマホの存在を思い出し、取り出そうとした瞬間
「あ、ヨリさん。おつかれさま!」
後ろから声をかけられた。
仕方なくスマホから手を離し、振り向く。
「おつかれさまです」
「今日お客さんすごかったですね、フロア大混乱!」
元気よく話す彼は最近はいったバイトの佐久間くんだった。
私より一つ年下の、人懐こい彼はあっという間に溶け込み、敬遠されがちな私にも話しかけてくれる。
「そうですね……」
なんて返せばいいのかわからず、当たり障りのない返事をする私に、彼は困ったように笑みを浮かべる。
「前も言ったけど、俺のほうが年下なんですから、敬語はいらないですってば」
「えっと……」
「あー、すみません!困らせたいわけじゃなくて。ただ俺は……そのヨリさんともっと仲良くなりたいっていうか」
顔を赤くして目を合わせる彼に、私はなにを言えばいいんだろう。
