でも私は、ただ立ち尽くすだけで、なにもできなかった・
だって、これは、間違ってる――そう思うのに、足は動かなかった。あの目を見たら、もう何も言えなかった。私も、ずるい。ずっとずるいまま。

ずっと、こうだった。
レオが手を差し伸べるから、私はそれにすがる。
私が泣いたら、レオは笑った。
私が黙れば、レオは怒った。
私のすべてを、あの人は壊してきた。

――なのに、どうして。

どうして、こんなにも胸が苦しいの。


「……レ、オ」


ふいに、私は膝をついていた。


「……大丈夫、だよ……」


そっと、レオの頬に触れた。
熱かった。濡れていた。震えていた。まるでずっと泣いていた子供みたいに。


「……大丈夫。私、ここにいるよ」


そう言った私に、レオはぐしゃぐしゃのまま、縋るように抱きついてきた。
背中が震えていた。細くなっていた。あんなに強かった腕が、こんなに弱くなっていた。

こんなの、ずるいよ。
でも私は――それでも、レオを抱き返してしまった。

なにも終わってない。
なにも変わってない。

私たちは、まだ、壊れたまま繋がってる。