クズ彼氏の甘く危険な呪縛



――――――



ドアを閉めた瞬間。背後から強く抱きしめられた。


「会いたかった……ヨリ」


ゾッとするほど甘さを含んだ声が耳元で囁く。
レオの冷え切った体が、私の体温を奪っていく。


「……レオ、離して」


どうしようもないほどの嬉しさを隠すように、静かに言った。
ゆっくりと、腕をほどいて、少し距離を取って向き合う。

浮いたままの手を不思議そうに見たあと、レオは表情の読めない瞳を私に向けた。


「……私たち……別れた、でしょ。だから、こういうふうに会いに来られても……困る」


”別れた”その言葉の苦さに顔をしかめながら、口にする。

レオは、ぴくりと肩を揺らして、それっきり動かなくなった。

目の前で立ち尽くす彼の姿は、どこか空っぽで、まるで魂だけが抜け落ちたようだった。
それから、ゆっくりと口を開く。


「……なんで、そんなこと言うの?」