「……レオくん」

「ん?」

「……わたし……」


何が言いたかったのかわからない。喉が震えて、声が消える。
だけどレオくんは笑って、私の頬を指先でなぞった。
そのまま、すっと、指が首筋に滑り落ちる。

触れ方が変わった。
甘やかすような手つきが、徐々に重くなる。
手が、背中をなぞる。スカートにかかる。脚の内側に触れそうになる。


「……っ、ちょ、レオくん……」


声は、か細かった。でも確かに拒む意志を込めたはずだった。
だけど、彼の指は止まらない。代わりに、囁かれた。


「愛してるよ、ヨリ」

「……」

「世界で一番、好き」

「……だめ……」

「ほかの女なんかとは全然違う。お前だけは特別。お前だけは、大事なんだよ」


言葉が、音が、耳の奥に溶けていく。
くすぐったくて、甘くて、痛くて、ひどくて、でも嬉しい。
心が、少しずつ、満たされていく。
あの教室の笑い声が、嘘だったみたいに。

……私には、レオくんしかいない。

その思いが浮かんだ瞬間、レオくんの口元がゆっくりと、薄く、笑った。

それは、優しさじゃない笑みだった。

そのまま私は、何も言えなくなった。
指先は、もうすっかり熱を帯びていて、触れられたところから、熱がじわじわと奥に染みこんでいく。
恥ずかしいくらい、身体の奥がきゅっとなって、息が詰まった。
痛くて、恥ずかしくて、怖かった。
でも、それよりも──


「愛してるよ」


──そう言われたことが、嬉しかった。
満たされた心に、酔いしれた。
なにかが壊れていく音を聞きながら、私はただ、

それでも、私にはレオくんしかいない

そう思ってしまった。