その日から
私は授業中も、休み時間も、つい気付けば葵くんを目で追ってしまっていた
窓の外を眺める横顔
ノートを取る整った手元
たまに小さく微笑んで誰かの話に頷く姿
ーーどうしてだろう
別に派手なわけでも、目立つわけでもないのに
どこか惹きつけられてしまう
「…また見てたでしょ」
隣の席の友達が小声でつつく
「え!?み、見てないよ!」
「ふーん?じゃあ今、何ページやってるの?」
「……」
何も言えずに苦笑いを浮かべた
友達はニヤニヤしながら「ま、頑張れ〜」とだけ囁いてきた
バレてる
完全に私の中で『気になる人』になってしまっている
そんなある日の放課後
私は忘れ物を取りに戻った教室で、偶然あの瞬間を目撃してしまう
カーテン越しに夕日が差し込む中
教室の隅で葵くんが立っていた
そしてーー
そっと、ゆっくりと
メガネを外していた
「あ…」
思わず小さく声が漏れる
葵くんはゆっくり振り向いた
そこにいたのは
いつもの「メガネの葵くん」ではなかった
透き通るような綺麗な輪郭
切れ長の鋭い瞳
ふわりと整えられた無造作な黒髪
整った鼻筋と、どこか色気のある唇
まるで
雑誌のモデルのようだった
私は言葉を失った
「…」
静かに数秒の沈黙
そして彼が口を開く
「見られた、ね」
低く
どこか含んだ声色だった
「ご、ごめんなさい…!」
私は慌てて頭を下げる
「違うの!本当にたまたまで!…その…」
「いいよ」
彼は微かに笑った
さっきまでとは違う、どこか艶のある笑顔で
「君になら…別に、隠さなくてもいい」
「え…?」
「どうせ、誰かに見られるなら…君でよかった」
ドキン、と胸が跳ねた
心臓が
どくどくとうるさく鳴っている
「…でも、これ…」
彼は手に持ったメガネを軽く掲げた
「僕には必要なんだ。普段は、これをかけていないと面倒だから」
「面倒…?」
「目立つのが、好きじゃないんだ」
ふわりと、柔らかく髪が揺れた
夕日がその輪郭を照らし、まるで漫画のワンシーンのような光景だった
「…誰にも言わないよ」
私は思わず口にしていた
「このこと、秘密にする。絶対に」
葵くんは、ほんの少し目を細めた
「信じるよ」
それだけ言って
そっと、またメガネをかけ直す
一瞬で
いつもの「僕」になる
「ありがとう」
今までで一番優しく、柔らかい笑顔だった
私はその笑顔を見つめながら思った
ーーこの人のこと、もっと知りたい
それが
私と葵くんの「秘密」の始まりだった
そしてゆっくりと、静かに
ふたりの距離は縮まっていく
私は授業中も、休み時間も、つい気付けば葵くんを目で追ってしまっていた
窓の外を眺める横顔
ノートを取る整った手元
たまに小さく微笑んで誰かの話に頷く姿
ーーどうしてだろう
別に派手なわけでも、目立つわけでもないのに
どこか惹きつけられてしまう
「…また見てたでしょ」
隣の席の友達が小声でつつく
「え!?み、見てないよ!」
「ふーん?じゃあ今、何ページやってるの?」
「……」
何も言えずに苦笑いを浮かべた
友達はニヤニヤしながら「ま、頑張れ〜」とだけ囁いてきた
バレてる
完全に私の中で『気になる人』になってしまっている
そんなある日の放課後
私は忘れ物を取りに戻った教室で、偶然あの瞬間を目撃してしまう
カーテン越しに夕日が差し込む中
教室の隅で葵くんが立っていた
そしてーー
そっと、ゆっくりと
メガネを外していた
「あ…」
思わず小さく声が漏れる
葵くんはゆっくり振り向いた
そこにいたのは
いつもの「メガネの葵くん」ではなかった
透き通るような綺麗な輪郭
切れ長の鋭い瞳
ふわりと整えられた無造作な黒髪
整った鼻筋と、どこか色気のある唇
まるで
雑誌のモデルのようだった
私は言葉を失った
「…」
静かに数秒の沈黙
そして彼が口を開く
「見られた、ね」
低く
どこか含んだ声色だった
「ご、ごめんなさい…!」
私は慌てて頭を下げる
「違うの!本当にたまたまで!…その…」
「いいよ」
彼は微かに笑った
さっきまでとは違う、どこか艶のある笑顔で
「君になら…別に、隠さなくてもいい」
「え…?」
「どうせ、誰かに見られるなら…君でよかった」
ドキン、と胸が跳ねた
心臓が
どくどくとうるさく鳴っている
「…でも、これ…」
彼は手に持ったメガネを軽く掲げた
「僕には必要なんだ。普段は、これをかけていないと面倒だから」
「面倒…?」
「目立つのが、好きじゃないんだ」
ふわりと、柔らかく髪が揺れた
夕日がその輪郭を照らし、まるで漫画のワンシーンのような光景だった
「…誰にも言わないよ」
私は思わず口にしていた
「このこと、秘密にする。絶対に」
葵くんは、ほんの少し目を細めた
「信じるよ」
それだけ言って
そっと、またメガネをかけ直す
一瞬で
いつもの「僕」になる
「ありがとう」
今までで一番優しく、柔らかい笑顔だった
私はその笑顔を見つめながら思った
ーーこの人のこと、もっと知りたい
それが
私と葵くんの「秘密」の始まりだった
そしてゆっくりと、静かに
ふたりの距離は縮まっていく



