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その数日後――
講義が早く終わった午後、偶然学内の中庭で樹先輩と出くわした
「紬ちゃん」
「先輩…!」
「少しだけ…歩かない?」
「……はい!」
春の風が静かに吹く中、ふたり並んでゆっくり歩く
「ちょっと疲れてる?」
ふっと柔らかく笑う先輩
「……そ、そんなこと…ないです」
「そっか。なら良かった」
少しだけ沈黙が続く
でもその静かな時間も、先輩といると心地よかった
ふと先輩が立ち止まる
「紬ちゃん」
ドクン――
「この前の話なんだけど」
顔がまた熱くなる
「……先輩…」
「焦らせるつもりはないけど――」
先輩の目が、少しだけ真剣になる
「紬ちゃんがもし迷う日があっても…
俺は、何度でも待つから」
ドクン――
「俺は紬ちゃんが隣にいてくれるだけで幸せだからさ」
ふわっと優しく微笑むその顔に
また胸がぎゅっと締めつけられた
(……先輩、やっぱり優しい…)
でも――頭の奥では
あの日、響に言われた言葉も
ずっと静かに揺れ続けていた__
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