双つの恋、選んだのは君だった

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数日後――

講義が終わって校舎を出たとき
ふいに後ろから響が声をかけてきた

「お前、最近…兄貴とよく一緒だな」

ドクン――

急にその言葉が刺さる

「……そ、そんなこと…」

「へぇ そう?」

響は口元だけで笑ったまま歩幅を合わせてくる

「この前中庭で何話してた?」

「え…!? な、何って…普通に話してただけで…」

「兄貴ってさ――」

ふと、響の声が少しだけ低くなる

「優しいフリして、案外積極的だからな」

ドクン――

「そ、そんなこと…!」

「……もう、告白された?」

一瞬、足が止まりそうになる

「……なんで…それ…」

「…んだよ 図星とか笑える」

わざとらしく肩をすくめて微笑む響

「……兄貴はいいよな。
優しくしてりゃ自然と距離も縮められるんだからさ」

響の声に
ほんの少しだけ刺々しさが混じり始めていた

「……そんなこと…」

わたしは小さく呟いた

「お前さ」

響がわたしを見下ろすように覗き込む

「もし俺に先に会ってたら――
俺のこと好きになってた?」

ドクン――!!

言葉が詰まる

(……なんでそんなこと言うの…)

でも何も返せずに歩き続けたまま
わたしの胸は静かに騒ぎ続けていた__

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