双つの恋、選んだのは君だった



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週明けの昼休み―

講義終わりにカフェテリアで席を探していたら

「お前、こっち」

響が自然に声をかけてきた

「え…あ…」

反射的に呼ばれて
断りきれずに隣に座る

「昨日、兄貴と出かけてたな」

ドクン――

「え、えっと…」

返事に詰まるわたしを横目で見ながら
響がふっと口元を緩める

「楽しそうだったな」



少しだけ低い声にトゲが混ざっているような気がした

「そ、そんな…誘ってもらっただけで…」

「誘われたら断らねぇのか?」

「……だって先輩優しいし…」

「…はぁ」

わざとらしく息をつく響

「ほんと兄貴ってずるいよな。
優しくしてりゃ自然と好かれるんだからさ」

その言い方に
わたしはまた何も言えなくなった

響は少しだけ身を乗り出して囁くように続けた

「……お前、ちゃんとわかってんだろ?」

「……な、何が…?」

「兄貴だけが優しいわけじゃないってこと」

ドクン――

響の低い声が耳の奥に響いて
心臓がまた跳ねた

(……なんで…こんな意地悪なのに…)

でも同時に、どこかズルいくらい胸がざわつくその声と距離感に
わたしはまた言葉を失っていった__

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