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その週の金曜日
サークルが終わって、みんな帰り支度をしていたとき
樹先輩が先に声をかけてきた
「紬ちゃん、今日はちょっと早めに帰るね」
「……わかりました。お疲れさまでした」
ふわっと優しく微笑んで、樹先輩は先に帰っていった
そのあと――
部室を出ようとしたときに、響が背後から声をかけてきた
「……なあ」
「……?」
「兄貴のこと…好きなんだろ?」
ドクン――
思わず足が止まりそうになる
「そ、そんな…!」
「図星か」
わざとらしく肩をすくめる響
「優しいもんな。
俺と違って、“嫌な気持ちにならないように”ってすぐ言うし」
その言い方が少しだけ寂しそうにも聞こえた
「で、でも…響くんも……優しいときあります…」
ふっと笑う響
「お前、ほんと天然だな」
「え…?」
「そんなこと言うから…余計揺れるんだろ?」
また距離を少し詰めてくる
「……意地悪です」
小さく呟いた声が少し震えてた
「お前が俺のこと
もう少し意識してくれるなら、全然意地悪じゃねぇんだけどな」
その低い声に
また心臓が跳ねた
……わたしの心は
ますます揺れの中に沈み込んでいった__
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