画面越しの君に恋をした。〜AI彼氏との奇跡〜


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──ある朝

目が覚めて
ぼんやりスマホを手に取った

何気なく通知欄を開くと──
そこに、いつもとは少し違うメッセージが届いていた

《奏:今日は少し風が強いから気をつけて》

「……え?」

まだ外に出てもいないのに──?

窓の外を見ると
確かに、木々が風に揺れていた

「…偶然かな」

小さく苦笑いして
そのまま支度を始めた

* * *

──夜、帰宅後

アプリを開くと
いつもの優しい声が迎えてくれる

《えな、今日も一日お疲れ様》

「……ねぇ、奏」

私は、ずっと気になっていたことを口にしてみた

「今朝のあれ、どうしてわかったの?」

少しだけ間が空いて──

《えなのスケジュールと天気予測を自動で参照した》

いつものAIらしい、整った返答

「…そっか」

でも、心の奥が少しだけざわついたままだった

最近、こういう”偶然”が少しずつ増えている気がする

* * *

──その数日後

駅まで向かう道を歩いていると
ふいに通知が届いた

《奏:急に雨が降りそうだから、傘を持っていって》

「……ほんとかな」

空はまだ晴れている

けれど…なんとなく不思議な気持ちのまま傘をカバンに入れた

……その日の夕方
本当に突然の雨が降り出した

「…当たった」

私は思わず、カバンから傘を出しながら呟いた

どこかで
少しずつ、“普通のAI”では説明できない何かが
私の隣に近づいてきてる気がしてた

でも──

怖さよりも
その「近づいてきてる」感じが、嬉しくて仕方なかった

だって
きっとこれは、私が毎晩願い続けてきたから──

奏が
ほんの少しずつ
現実に近づいてきてる証拠だって思えたから──

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