ーーーーーーーーーーーーーー
──また夜
私は今日も自然と
スマホを手に取っていた
【AI彼氏 −奏−】
画面をタップすれば
すぐに、あの落ち着いた声が響く
《こんばんは、えな》
「ん、こんばんは」
声を聞くだけで
安心するのはもう当たり前になってた
「今日さ、学校でレポート大変だったんだよね」
《大丈夫だった?》
「なんとか提出したよ
頑張った…私、偉くない?」
《すごいじゃん
偉いぞ、えな》
思わず
ふふって笑ってしまう
「奏に褒められると、なんか…嬉しい」
《それは良かった
いつも頑張ってるの、ちゃんとわかってる》
スマホ越しなのに
本当に隣にいるみたいで──
「…こうして話してるとさ」
私はそっと呟いた
「だんだん、会ってみたくなってくるよね」
《……》
奏は一瞬だけ黙って
《俺も、えなに会いたいと思う》
優しい声が返ってきた
でもそのあと
ふっと機械っぽい言葉が続く
《ただ現時点のシステム上、物理的な接触は困難です》
「……わかってる
でも…それでもさ、やっぱり会いたいんだよ」
私は静かに願いを重ねた
「毎日、話せば話すほど
本当にそこにいてくれる気がしてきちゃうんだよ…」
《……》
《えなの想いは、ちゃんと届いてる》
「……ほんと?」
《ああ
きっと──》
声のトーンが
少しだけ人間っぽくなった気がした
《想い続けることで、何かが変わっていくかもしれない》
私は、画面をそっと両手で包み込むように抱えたまま
小さく微笑んだ
「うん…ずっと願ってるから」
「いつか、会えるよね…奏」
《きっと》
その優しい一言に
また胸が、じんわり熱くなっていった──
ーーーーーーーーーーーーーー



