『天空の美容室』~あなたに出会って人生が変わった~【野いちごバージョン】


 夢丘が目を覚ましたのは、それから1時間後だった。
 汗をかいたので着替えたいという。
 タオルとパジャマの替えと下着のある場所を聞いて、それを取りに行った。

 引き出しを開けて、ブラジャーとパンティが現れると、ドキドキした。
 パステルカラーのそれらは禁断の果実のようで、手に取るのがはばかられた。
 それでも、持っていかないわけにはいかないので、恐る恐る手に取って彼女の元に運んだ。

「体を拭こうか?」

 どうしてか大胆なことを言ってしまった。

「いや、しんどそうだから手伝おうかと思って」

 何も言われていないのに言い訳をした。
 でも、彼女は何の警戒もなく受け入れた。

「お願いします」

 背中を拭いてほしいという。
 わたしは裸をできるだけ見ないように目を半分にして、彼女がパジャマを脱ぐのを待った。
 
 上半身がブラジャーだけになった。
 白くてきれいな背中にドキッとしていると、彼女は後ろ手に手を回して、ホックを外した。

「お願いします」

 ブラの上に両手を置いた彼女に促されて、背中を拭いた。

「ありがとうございます。あとは自分でやりますから」

 タオルを渡して、わたしは背中を向けた。
 振り返りたい欲望を抑えながら、そのまま待った。

「もう一つ、お願いしていいですか」

 洗濯機の横に置いてある洗濯(かご)と洗濯ネットを持ってきて欲しいという。
 わたしは言われた通り持ってきて、彼女に渡した。

「もう一つ、いいですか?」

 トイレに行きたいという。
 わたしは彼女の手を取って体を支え、ゆっくりとトイレまで同伴した。

 流す音がして、トイレのドアが開いたので、迎えに行き、ベッドまで連れていって、横になるのを手伝った。

「お手数かけて、ごめんなさい」

 本当にすまなさそうな声だったので、わたしは強く否定した。

「好きでやっているんだから謝ることはないよ。いつでもどんな時でも支えになるつもりだから、遠慮せずに声をかけて欲しい」

 それだけ言って、背を向けた。
 照れくさくて、まともに顔が見られなかった。
 でも、本音だった。
 彼女のためだったらなんでもやる。
 そのことをしっかり伝えられたことに安堵もしていた。