報復を最愛の君と

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不思議とすっきりとした朝を迎えた私は、すぐにクラを起こした。


他のみんなはまだ寝ている。


「クラ、クラ。起きて」


少し声をひそめて、名を呼んだ。


何度か呼ぶと、そのきれいな瞳を見せてくれた。


「ヒメア様…?どうされたのですか?」


目をこすりながら体を起こすクラ。


そんな様子はおかまいなしで、私はクラの腕を引っぱって外に出た。


『明日の朝、クラを連れてこの部屋に来てよ。ちゃんと謝りたいんだ』


昨日セレストはそう言った。


私はふたりには仲良くしてほしいし、断る理由もなく頷いたんだ。


「ヒメア様?どこに行くのですか?」


「言ったら来ないから言わなーい」


きっとセレストのところに行くと言えば、いかないと言って拒否するだろう。


そんなことはわかっていたから、あえて行き場所は告げなかった。


そうして、私達は階段を上がっていく。


朝の時間帯は夜とはまた違って、陽がとても美しく感じる。


「きれいだね」


「そう…ですね」


もうわかってきたのだろう、どこに向かっているのか。


それでも、クラは戻るとは言わなかった。


最上階まで来て、私はセレストの部屋の扉をノックする。


コンコン。


私がノックしたと同時に、クラがぐいっと私を引っぱる。


「やめてください…。やっぱりあの人とはもう話したくないのです!!なにが目的なのですか?」


私はクラの手をギュッとにぎった。


「クラ、貴女が思っているほどセレストは悪い人じゃないの。むしろかわいそうな人なの。だから、しっかり話し合ってほしいと思って」


「でもっ…!でも…」


クラは口ごもった。


もしかしたら、自分でも気がついていたのかもしれない。


セレストの本性に。


だったら、なおさらふたりは話し合うべきだ。


私はドアを開けてクラを部屋の中に押し入れていく。


「ちょ、ちょっとヒメア様!」


「いいから入るの!!」


私はクラが逃げないように、ドアをしっかり閉めた。


それから前を向けば、セレストが紅茶を飲みながらイスに座っていた。


そして、彼が顔をあげた。


「昨日ぶりだね、エクラ。ゆっくり眠れた?」


セレストはなにも気にしていない様子で話しかけてきた。


でも、その方がクラも話しやすくていいだろう。


「まあ…はい。あのっ…、セレスト様が私を呼んだのですか?」


セレストはその質問には答えず、クラに近寄った。


それから、彼の手がクラのつけているチョーカーに触れた。


「これは取ろうか。もう必要ないみたいだし」


そう言った途端、カチャリと音を立てて外れた。


「どういうことですか…?」


疑っているようで、クラはセレストのことをきつく睨んでいた。


すると、セレストはにこりと笑った。


「これがあると、ボク達は対等に話せないでしょ?だから外しただけだよ。ヒメア、少しふたりで話をしたいから席を外してくれるかな?」


私はすぐに頷いた。


クラもなにかを感じとったのか、なにも言ってこなかった。


そして、私はふたりに向かって微笑んでから部屋を出た。


どうかふたりが無事に仲直りできますように。


そう願いながら、私は階段を降りていった。