報復を最愛の君と

***


その日の夜、私の部屋には予定通りルナが来た。


「姫様、いらっしゃいますか?」


いつも元気で声の大きいルナだけど、今は雰囲気が違って頼もしく見える。


「いるよ。迎えにきてくれてありがとう」


「い、いえ!それより、お洋服を着替えましょう!それでは動きにくいですし」


薄着のワンピースのような部屋着は、水に浸かっていて動きずらい。


普段寝る時は水の中に入って楽にして寝るから。


たしかに今は着替えた方が楽かもしれない。


「そうする。そこのクローゼットに服が入ってるから、とってくれない?」


ルナの後ろにあるクローゼットにを指差し、そう言った。


コクっとうなずき、服をとってくれる。


その間私は人魚の姿から人間の姿へと変えた。


濡れた体をふいて、ルナから服を受け取る。


「ありがとう。ちょっと待ってね、すぐ着替えるから!」


ルナが用意してくれたのは水色と白のワンピース。


首元には赤色のブローチがついている。


「姫様のお気に入りの服…で合っていますよね?」


そう聞かれて、驚いて目を見開く。


「ルナってよく見てるよね」


「ふふっ、姫様のことならなんでもわかりますよ!」


自信満々に言ったその言葉に、私は嬉しくなった。


その後着替えが終わり、全ての荷物を持って部屋を出た。


もちろん見つかってはいけないから、静かに移動をする。


廊下を進んで数分経った頃、おそらく見回りの男がこちらに近づいてきた。


隠れる場所を探すが、どこにもない。


「どうする?隠れる場所はなさそうだし…」


そう小声で伝えると、ルナは人差し指を口に当てて笑った。


私の手をひいてすぐ隣の壁を押した。


すると、静かに壁の一部がまわったのだ。


私達はするりと壁の奥へと移動する。


「ここまでくれば安心ですよ!防音になってますし」


そう言ってにこっと笑って見せたルナ。


私は驚きで動けない。


「うそ…」


こんなところに隠し通路があったなんて、知らなかった。


どうして今まで気がつかなかったんだろう。


「ここは特定の人しか入れないように、能力をかけてもらったんです!だから見つからなかったんですよー!」


笑顔でそんなことを言うルナには、やっぱりついていけそうにない。


私はため息をつく。


「説明は今度でいいよ。とにかく、今は急がなきゃなんでしょ?」


「はい、そうですね。じゃあついてきてください!」


そう言ってからルナは走り出した。


私も後に続いていく。


数分間この長くて薄暗い廊下を走り続けて、奥にようやくドアが見えてきた。


「あそこから裏庭に出られます!ソラ様とスイくんはそこで待っているとのことです!」


そうして私達はドアの前につき、外に出る。


外に出るとそこはもう見慣れた景色。


誰もこない噴水のある裏庭だった。


「わわ、そういえばずっとお荷物を持たせていましたね!お持ちしますよ…!」


「いいよそんなの…!私の荷物なんだし」


私の荷物を持とうとしてくれたけど、私は首を横に振って断った。


「ですが…」


「ルナ。ヒメアが自分で持つって言ってるんだし、いいんじゃない?」


いつのまにか私達の後ろに立っていたソラとスイ。


「ソラ様!」


「ソラ!」


私とルナの声がかぶり、ソラがくすりと笑う。


「やあ、今宵は月がきれいだねヒメア。無事にここまできてくれて安心だよ」


そう言ってウインクをした。


かっこいいから、バッチリ決まっちゃうの。


私は何も言えずただうなずいた。