次の日、あたりを警戒しながら裏の道を探していた。
「あった。ここだ」
ソラが指さしたのは、さびた裏門のすぐ横の隠し扉だった。
子供が入るような大きさで、壁と色が同化している。
裏門は長年使われていないようで、ここもおそらく使われないのだろう。
私が隠し扉に手をつけると、突然ビリビリとした何かを感じた。
「お前達は人間か?」
誰の声でもない、初めて聞く男の声。
とっさに振り返ったところにいたのは、銀色の髪と瞳を持つ狼のような青年だった。
何か不思議なものを感じる気がする。
金縛りのように動けない。
すると、青年は私に近づいて言った。
「カノン、帰ってきたんだ」
「ひっ…」
私に向かって伸びる手を阻止してくれたのは、スイの剣だった。
「ヒメア様!!」
「ヒメア!」
ソラが私を守るように抱きしめてくれる。
すると、さっきまでの金縛りが解けた。
「大丈夫か?」
「う、うん」
視線を青年に向けると、ふたりをきつくにらんでいた。
「あ、あのっ。私は人魚ですけど、カノンとは別人なんです」
誤解していると思い、私は青年にそう言った。
すると、青年は私をまじまじと見つめる。
それからため息をついた。
「ごめんね、僕が勘違いしていたみたいだ。用があるなら人魚と聖女だけ入りな。後の3人は人間だろう?ベルス国に入れば、人間は食い物にされるか奴隷(どれい)にされるかだよ」
その言葉に怖くなった。
門前払いされるのかと思っていたけれど、想像していたよりずっとざんこくだったから。
「残念だけど、それはできないよ。俺達は天竜と銀狼に会わなければならないからね」
「…なに、人間が僕らに何の用?」
青年はもう一度きつく私達をにらんだ。
今、“僕ら”って言った?
「もしかして貴方、銀狼…?」
「そうだよ。人魚なら僕が何者か気がつくと思ったよ。僕は初代銀狼だ」
「初代…銀狼…」
この青年はクラの探していた銀狼。
クラを見れば、彼女は下唇を噛んでいた。
きっとあふれ出してくる感情を耐えているのだろう。
「銀狼、俺達を国に入れてくれないか?決して君達が思っているような、攻撃をしたりだとかはしない」
「…いいよ」
あっさりと了承したので、驚いてしまう。
それから彼は、ニヤリと笑って言った。
「ただし条件がある。そこの女を人質(ひとじち)にする。そして、僕の言うことには従ってもらうよ」
青年はいつのまにかクラの首に手をつけていた。
クラの首には鈴付きの首輪がつけられている。
その時、クラから聞いたあの話を思い出した。
確か「能力者の首には鈴のついた首輪がつけられてた」って言ってた。
「この鈴は特殊だから、鳴らせば首がしめられる。これで人質確保だ。従わなければクラは死ぬ。嫌なら僕の言うことを絶対服従だよ。それでいいなら、国に入れてあげる」
なんてひどい。
そうしなければ私達は国に入れないのだ。
かと言って、クラを危険な目に合わせられない。
すると、クラが口を開いた。
「セラン、貴方は私のことを覚えているのですか?」
「……覚えてる。300年前にカノンとずっと一緒にいた人間だろ」
クラは悲しそうな顔をした。
それから、何かを決意したように言う。
「ヒメア様。どうか私のことは気になさらず、せっかく国に入れるチャンスを逃してはいけません」
クラの真剣な瞳を見たら、断るなんてことできなかった。
「銀狼…いいえセラン。条件をのみます」
私のその言葉に、満足したようにセランは笑った。
「あった。ここだ」
ソラが指さしたのは、さびた裏門のすぐ横の隠し扉だった。
子供が入るような大きさで、壁と色が同化している。
裏門は長年使われていないようで、ここもおそらく使われないのだろう。
私が隠し扉に手をつけると、突然ビリビリとした何かを感じた。
「お前達は人間か?」
誰の声でもない、初めて聞く男の声。
とっさに振り返ったところにいたのは、銀色の髪と瞳を持つ狼のような青年だった。
何か不思議なものを感じる気がする。
金縛りのように動けない。
すると、青年は私に近づいて言った。
「カノン、帰ってきたんだ」
「ひっ…」
私に向かって伸びる手を阻止してくれたのは、スイの剣だった。
「ヒメア様!!」
「ヒメア!」
ソラが私を守るように抱きしめてくれる。
すると、さっきまでの金縛りが解けた。
「大丈夫か?」
「う、うん」
視線を青年に向けると、ふたりをきつくにらんでいた。
「あ、あのっ。私は人魚ですけど、カノンとは別人なんです」
誤解していると思い、私は青年にそう言った。
すると、青年は私をまじまじと見つめる。
それからため息をついた。
「ごめんね、僕が勘違いしていたみたいだ。用があるなら人魚と聖女だけ入りな。後の3人は人間だろう?ベルス国に入れば、人間は食い物にされるか奴隷(どれい)にされるかだよ」
その言葉に怖くなった。
門前払いされるのかと思っていたけれど、想像していたよりずっとざんこくだったから。
「残念だけど、それはできないよ。俺達は天竜と銀狼に会わなければならないからね」
「…なに、人間が僕らに何の用?」
青年はもう一度きつく私達をにらんだ。
今、“僕ら”って言った?
「もしかして貴方、銀狼…?」
「そうだよ。人魚なら僕が何者か気がつくと思ったよ。僕は初代銀狼だ」
「初代…銀狼…」
この青年はクラの探していた銀狼。
クラを見れば、彼女は下唇を噛んでいた。
きっとあふれ出してくる感情を耐えているのだろう。
「銀狼、俺達を国に入れてくれないか?決して君達が思っているような、攻撃をしたりだとかはしない」
「…いいよ」
あっさりと了承したので、驚いてしまう。
それから彼は、ニヤリと笑って言った。
「ただし条件がある。そこの女を人質(ひとじち)にする。そして、僕の言うことには従ってもらうよ」
青年はいつのまにかクラの首に手をつけていた。
クラの首には鈴付きの首輪がつけられている。
その時、クラから聞いたあの話を思い出した。
確か「能力者の首には鈴のついた首輪がつけられてた」って言ってた。
「この鈴は特殊だから、鳴らせば首がしめられる。これで人質確保だ。従わなければクラは死ぬ。嫌なら僕の言うことを絶対服従だよ。それでいいなら、国に入れてあげる」
なんてひどい。
そうしなければ私達は国に入れないのだ。
かと言って、クラを危険な目に合わせられない。
すると、クラが口を開いた。
「セラン、貴方は私のことを覚えているのですか?」
「……覚えてる。300年前にカノンとずっと一緒にいた人間だろ」
クラは悲しそうな顔をした。
それから、何かを決意したように言う。
「ヒメア様。どうか私のことは気になさらず、せっかく国に入れるチャンスを逃してはいけません」
クラの真剣な瞳を見たら、断るなんてことできなかった。
「銀狼…いいえセラン。条件をのみます」
私のその言葉に、満足したようにセランは笑った。


