報復を最愛の君と

私はスイに用意してもらった紅茶を飲んで、一息つく。


それから、ソラに問う。


「それで?作戦というのは具体的に何をするの?」


「んー、漠然(ばくぜん)とした計画しかまだないんだけどね。まずは、仲間が必要だ。必要不可欠な能力者をリストアップしてある」


そう言ってソラは資料を渡してきた。


それにはこの人間主義国では手に入るはずのない、能力者達の情報がたくさん詰まっていた。


どれも強力な能力だ。


それほど敵が強いということでもあるんだろう。


「2ヶ月の長期休みを使って、フロス国に向かおうと思う。手配は俺がしとくよ」


「手配済みでーす」


にこにこ笑いながらそう言ったスイ。


準備早すぎない?


「あ、ありがとう…。えっと、フロス国って…」


「知っての通り、この大陸唯一の“平等国”だ。だから、俺達は名前を偽るだけでいいってこと」


フロス国は別名平等国と言われていて人間と能力者、聖女が平等な立場で暮らせる国だ。


それぞれが役割を果たし、国は成り立っている。


「能力者も多くいる国だし警戒もされない。協力者はここで探そう」


「でも、それならベルス国の方がいいんじゃないの?」


ベルス国、別名能力者国。


国外追放された能力者達も受け入れてくれる優しい自然の国。


能力者を見つけるなら、その国が良さそうだけど。


「いや、その国は入国するのが面倒なんだ。だからやめておいた方がいい。それと、最終的には奴らの基地であるカント国に行こうと思う」


「カント国に基地があるの!?」


まさか人間主義国に基地を作るなんて、そんなリスクの多いことをしているとは思っていなかった。


私の声に、ソラはうなずいた。


「ああ、残念なことにな」


「……本当に」


自分の国に敵がいるのに自分の力では何もできないなんて、一体彼は今どんな気持ちなのだろう。


こんなもの、さっさと終わらせなければ。


「早く決着をつけよう。まあ、イコロ国からは警備が強すぎてヒメアがカント国にはいけないからね。遠回りしなきゃだけど」


イコロ国からカント国へは、なぜか警備が強い。


そのせいで私は通れない。


私みたいな能力者を通さないようにしてるんだろうけど。


こんなに国の警備が面倒だと感じたのは、初めてかもしれない。


「こればっかりは仕方ないね。長旅を楽しめってことだよ」


やれやれとでも言うように、スイは首を振った。


「私はスイとソラと一緒にいろんな国に行けるのは楽しみかな。お城と学園以外は行けなかったから」


自分がもし人魚の姿になっても、大丈夫なように。


常に誰かが監視できる場所以外では過ごせない、街にも行ってはいけない。


そんな私が、まさか他国に行くなんて思いもしなかった。


「あ、そういえば。私は他国にはいけないよ…。お父様の監視があるし」


「それなら大丈夫。ルナ・ヌベスという使用人を知ってる?」


「もちろん知っているわ。私を人魚だと知っても、呪いと扱わなかった唯一の子よ」


夜に庭で会ってから、彼女とは仲良くしている。


人間には珍しい濃い紫の髪と瞳、平凡なように見えて変わった容姿をもつ彼女は前から宮殿で噂で聞いていたのだけれど。


「それはよかった。実はルナは俺の仲間なんだ。彼女も連れて行く」


「ええっ!?そうだったの!?」


そんな情報全く知らなかったから、驚いてしまう。


彼女の口から聞いたこともなかったし…。


「魔力は少ないけど、ルナは立派な聖女なんだ。小さな傷をいやしてくれたり、疲れを飛ばしてくれるよ。きっとこれから助けになる」


そんなにすごい子が近くにいただなんて、全くわからなかった。


ルナには感謝しなければ。


「ああ、だからこれでひとまずメンバーはそろった。明日の夜はルナの指示に従って動いて。城を抜け出してフロス国に向かう」


「…うん、わかった。それで行こう」


それで国を出れるなら、私はそれでいい。


国を出て旅ができるなんて、とても楽しみになってきた。