「…」
霧島くんが急に私の耳元に口を近付けてきて、こう言った。
「よろしくね、綾ちゃんっ」
さらに、とどめのにこっと笑顔。
「ひゃあっ…」
わっと、教室内もざわめく。
「僕はさー、霧島くんじゃなくて、梨生がいいなー。いいなー」
「えっ、わっ、わっ、私?」
「うんっ。綾ちゃんに呼ばれたい〜〜」
わわっ。そ、そんなふうに目をきらきらさせて見ないでっ…。
「り、梨生くん?」
「やった〜!よろしくねっ、綾ちゃん!」
そう言って、いたずらっ子のようにふふっと梨生くんは笑った。
**
じゅ、授業中も、梨生くんがなんだか私にいっぱい話しかけてきて、すごい集中できなかった…。
でも、梨生くんのせいではない!
そう言えば、他のクラスに転校してきたもう1人の転校生って、誰なんだろう…?
廊下を歩いていたら、すぐその疑問は解決した。
な、なんだか…っ、廊下で水晶を出して何かをやっている、見知らぬ男子がいるっ…この子が、か…。
水晶出して、何してるんだろう。水晶って、そんなに簡単に手に入らないよね…?
しかも、その男子の前にずら〜っとできた、行列‼︎
なっ。
なんだっ、これは…‼︎
「未来を占いま〜す、志木紫央です〜」
志木、くん、か。
「えっ、そうなの⁉︎」
「うんっ。志木くんに占ってもらったこと、めっちゃ当たってるの!やばいよ、あの子!すごい!」
「百発百中って噂だよね!」
占い?ひゃ、百発百中⁉︎
そう言えば、未来を占うって…結構すごい子なのかも‼︎
私も結構占いを何回かしてもらったことはあるけど、当たったことはないから…占いが当たるって、結構すごいことだって、わかる。
「……」
志木くんは急に黙って水晶を見つめ始める。
「…」
そうして、ささっと水晶を持ってすたすたと歩き始めた。
え、ええっ…?
「あっ。志木くん、行っちゃった…!」
一番前にいた女の子が、少し残念そうに志木くんを目で追う。
「志木くんって、すごい気まぐれだよねっ」
「ほんと、それ!志木くん、急にこっちに来たと思えばすぐどっか行っちゃうし。不思議ちゃんだよね〜」
「それを言うなら不思議君くん」
あちこちからそんな声が聞こえる。不思議くん、かぁ…。なんだかすごいあだ名だ。



