「また、来ようかな…」
「…」
いつ、とは言わなかった。
好青年も返事をしなかった。
よく来るとは言っていたけど、きっと毎日来ても会えない。
その返事の通り、一週間ぶりに行ってみたけど、会えなかった。
陽が沈む時間からそれが昇るまで待った日もあったけど、会えない。
車輪止めに腰掛けて感動した夜景を見ることもなく、頬杖をついてただ待ったけど、来るのは夜景を見に来た幸せそうなカップル。
手を繋いで肩を寄せ合って。
時には輝く指輪を見せられて、泣き崩れる女の子も見た。
微笑ましい光景を見る度、あの好青年は幻だったと思うほど架空の人物になっていった。
会いたいと思う時に一人だと気付かされて、自分の首を絞めている。
「今日行って、会えなかったらもう行くのやめる」
そう言いながら、どうにか居てほしいことを願って、今日も三、四時間自転車を漕いだ。
長時間の運転にも慣れて、足は棒にならなくなったし、寂しさも感じにくくなっている。
正確には、感じにくくなるように自分に暗示をかけている。



