最後に名前を呼べたなら ―君の記憶と、永遠に―

「ねぇ、なあってさ」

コンビニのイートイン
帰り道に寄り道した4人の中で
真っ先にその話を切り出したのは**莉愛(りあ)**だった

 

「悠くんのこと、なんか気になってるでしょ?」

 

菜亜はストローをくわえたまま、一瞬フリーズした

「……なんで?」

「え、いや見てたらわかるし」
「てか今日のハンカチの件、完っ全にキュン狙いだったよね?」

莉愛がニヤニヤして見てくる

「違うってば…たまたま置き忘れただけで…」

そう言ったけど
声に説得力がないのは、自分でもわかってた

 

「てかさ、なあって悠くんと雰囲気似てるよね」
ふいにそう言ったのは一華(いちか)

「静かだけど、目立つっていうか
なんか空気感が合ってるって思った」

「うん、それちょっとわかる」
**希衣(きい)**も頷く

「でも悠くんって誰にでも優しいってわけじゃないからさ
今日の感じ、ちょっと特別だった気するよね?」

 

その言葉に、心が少し揺れた

“特別”って
簡単に言われると、うれしい反面…こわくなる

まだ自分の中で答えも出てないのに
周りが先に、期待の形を作ってくるから

 

「……でも、ほんとにまだなんにもないよ」

そう言って笑ったけど
誰よりも自分自身が
その“不安定なドキドキ”をわかってた

 

 

ふたりの関係は
まだ始まってもいない

でもきっと
誰にも見えないところで
何かが芽吹きはじめてる

そんな気がしてならなかった