「……あれ?」
静まり返った図書室の奥
並ぶ本棚の影から、菜亜の声がした
悠は
授業で出たレポート課題の資料を探しに来ていた
けど
その声を聞いた瞬間
目的なんてどうでもよくなった
「悠くんも来てたんだ」
そう言って微笑む菜亜に
心臓が勝手にリズムを変える
「ああ、レポート用の資料探しに」
そう言いながら
距離をとるように一歩横にずれる
けど、菜亜は一歩、近づいた
「……ねえ」
声のトーンが
さっきまでと違った
「なんか、前にもこうやって話したことある気がするのって……変かな?」
一瞬、時が止まったような感覚がして
悠は言葉を返せなかった
「夢とか……前世とか、そんな話じゃなくて」
「でも……今日みたいな感じ、すごく懐かしい気がして」
心の奥を
小さな指で、そっと触れられたような気がした
「……俺も、そんな気してた」
気づいたらそう答えてた
沈黙が落ちる
けど
それは重くも苦しくもなくて
ただ静かに
お互いの存在を感じる時間だった
「……じゃあ、私こっち探すね」
菜亜が歩き出す直前
ふと振り返って、こう言った
「さっき“ありがとう”って言ったけど
ほんとは、今朝のぶつかった時も言いたかったんだ」
「あの時、すごく変な感覚がして
思わず、走っちゃったから……ごめん」
走り去った理由を
こうして言葉にしてくれたことが
なんでか知らないけど
すごく、嬉しかった
悠は
本棚の陰から去っていく彼女の背を見ながら
「……変な感覚、か」
心の中で繰り返した
それは
この夏の始まりと一緒に
何かが動き出した音だったのかもしれない
静まり返った図書室の奥
並ぶ本棚の影から、菜亜の声がした
悠は
授業で出たレポート課題の資料を探しに来ていた
けど
その声を聞いた瞬間
目的なんてどうでもよくなった
「悠くんも来てたんだ」
そう言って微笑む菜亜に
心臓が勝手にリズムを変える
「ああ、レポート用の資料探しに」
そう言いながら
距離をとるように一歩横にずれる
けど、菜亜は一歩、近づいた
「……ねえ」
声のトーンが
さっきまでと違った
「なんか、前にもこうやって話したことある気がするのって……変かな?」
一瞬、時が止まったような感覚がして
悠は言葉を返せなかった
「夢とか……前世とか、そんな話じゃなくて」
「でも……今日みたいな感じ、すごく懐かしい気がして」
心の奥を
小さな指で、そっと触れられたような気がした
「……俺も、そんな気してた」
気づいたらそう答えてた
沈黙が落ちる
けど
それは重くも苦しくもなくて
ただ静かに
お互いの存在を感じる時間だった
「……じゃあ、私こっち探すね」
菜亜が歩き出す直前
ふと振り返って、こう言った
「さっき“ありがとう”って言ったけど
ほんとは、今朝のぶつかった時も言いたかったんだ」
「あの時、すごく変な感覚がして
思わず、走っちゃったから……ごめん」
走り去った理由を
こうして言葉にしてくれたことが
なんでか知らないけど
すごく、嬉しかった
悠は
本棚の陰から去っていく彼女の背を見ながら
「……変な感覚、か」
心の中で繰り返した
それは
この夏の始まりと一緒に
何かが動き出した音だったのかもしれない



