たとえ、どんなに強く想っても
人の記憶には限りがある
でも――
想いには、限界なんてなかった
時間が減っていくたびに
ふたりの気持ちは、逆に強くなっていく
それは“終わり”じゃなく
“最後まで好きでいたい”って、願いの形だった
⸻
悠の検査結果が出たのは
夏休みがあと数日で終わる、静かな午後だった
「進行してるって……」
先生がそう言うのを聞いたとき
心のどこかで覚悟してたくせに、胸の奥がえぐられるように痛んだ
「あとどれくらい、わたしのこと……」
その先が言えなかった
帰り道
ふたりで寄った公園のベンチ
「……悠」
「ん」
「夏が終わって、秋になっても」
「わたし、ずっと好きでいていい?」
悠は、何も言わずにうつむいたあと
静かに口を開いた
「俺さ、たぶん……全部は守れない」
「記憶も、未来も、お前との約束も」
「けど……」
ゆっくり顔をあげて、菜亜を見つめた
「それでも“今の俺”がちゃんと好きでいるってことだけは、信じていい」
涙がこぼれそうになった
でも、泣いたら負けだと思って
ぎゅっと唇をかんだ
「じゃあ、覚えてて」
「わたしのこと、全部じゃなくていい」
「名前だけでいい」
「“菜亜”って、たまに呼んでくれたら」
「それだけで、わたしは頑張れるから」
「……わかった」
悠はうなずいて、
そのまま菜亜の頭を優しく撫でた
「名前だけなら、たぶん何回でも覚え直せる気がする」
そして
その夜、悠は記憶帳の最後のページを開いた
“まだ、言えてないこと”
そこに、自分の字で書き込む
「俺は、菜亜を――」
次の日、悠は突然いなくなった
病状が急に悪化して
都内の大きな病院に転院することになったのだ
スマホの履歴には、未送信のメッセージだけが残ってた
「……待ってるよ」
残された時間は少なかった
でも菜亜は、信じることだけはやめなかった
「また、会えるよね」
「名前、呼んでくれるよね」
菜亜が信じてる間だけ
その想いは、ちゃんと続いていく
たとえ会えなくても
たとえ思い出せなくても
想っているかぎり――
ふたりは、まだ「恋人」だった
人の記憶には限りがある
でも――
想いには、限界なんてなかった
時間が減っていくたびに
ふたりの気持ちは、逆に強くなっていく
それは“終わり”じゃなく
“最後まで好きでいたい”って、願いの形だった
⸻
悠の検査結果が出たのは
夏休みがあと数日で終わる、静かな午後だった
「進行してるって……」
先生がそう言うのを聞いたとき
心のどこかで覚悟してたくせに、胸の奥がえぐられるように痛んだ
「あとどれくらい、わたしのこと……」
その先が言えなかった
帰り道
ふたりで寄った公園のベンチ
「……悠」
「ん」
「夏が終わって、秋になっても」
「わたし、ずっと好きでいていい?」
悠は、何も言わずにうつむいたあと
静かに口を開いた
「俺さ、たぶん……全部は守れない」
「記憶も、未来も、お前との約束も」
「けど……」
ゆっくり顔をあげて、菜亜を見つめた
「それでも“今の俺”がちゃんと好きでいるってことだけは、信じていい」
涙がこぼれそうになった
でも、泣いたら負けだと思って
ぎゅっと唇をかんだ
「じゃあ、覚えてて」
「わたしのこと、全部じゃなくていい」
「名前だけでいい」
「“菜亜”って、たまに呼んでくれたら」
「それだけで、わたしは頑張れるから」
「……わかった」
悠はうなずいて、
そのまま菜亜の頭を優しく撫でた
「名前だけなら、たぶん何回でも覚え直せる気がする」
そして
その夜、悠は記憶帳の最後のページを開いた
“まだ、言えてないこと”
そこに、自分の字で書き込む
「俺は、菜亜を――」
次の日、悠は突然いなくなった
病状が急に悪化して
都内の大きな病院に転院することになったのだ
スマホの履歴には、未送信のメッセージだけが残ってた
「……待ってるよ」
残された時間は少なかった
でも菜亜は、信じることだけはやめなかった
「また、会えるよね」
「名前、呼んでくれるよね」
菜亜が信じてる間だけ
その想いは、ちゃんと続いていく
たとえ会えなくても
たとえ思い出せなくても
想っているかぎり――
ふたりは、まだ「恋人」だった



