(最近、夢をよく見る)
しかも決まって
“菜亜と、もう会えない夢”
起きると心臓がバクバクしてて
なぜか、涙が出てることもあった
(情けねぇな、マジで)
(こんな感情、誰にも見せたくねぇのに)
放課後、ふたりで帰ってるとき
河川敷の前でふと足が止まった
「なあ、ここ」
「ん?」
「なんか……変な感じがする」
「変な感じ?」
「この前、一緒に来たよな?」
「うん。夕焼けのとき」
「チョコバナナ食べながら、くだらない話して」
悠は、少し黙って空を見たあと、言った
「……ごめん。俺、それがうまく思い出せないんだ」
菜亜が、驚いた顔で振り向く
「……忘れたの?」
「わかんねぇ。覚えてる部分もあるんだけど
何かが、抜けてんだよな」
「夢みたいに、曖昧で…でも、確かに“あった”ってわかる」
「病院、行こ?」
「だいじょぶ。疲れてんだろ、たぶん」
そう言いながら
心の奥では、はっきりとわかっていた
これは
“ただの疲れ”じゃない
(何かがズレてる)
(確実に、俺の中の“何か”が)
でも
言えなかった
菜亜が心配する顔が
どうしようもなく、悲しくさせたから
(俺の中にある、なにかが壊れても)
(この時間だけは、守りたかった)
そう願ってた
願ってたのに――
(夜、夢を見た)
菜亜が遠ざかっていく夢だった
必死で名前を呼んでも
振り返ってくれなかった
「……菜亜……っ」
目を覚ました瞬間
頬が濡れていた
手を見た
震えていた
そして、カレンダーに目をやる
“ある日付”に、〇がついていた
(なんでこの日、印つけてたんだっけ)
(思い出せない)
心の奥で、確かに
“終わりの足音”が鳴っていた
しかも決まって
“菜亜と、もう会えない夢”
起きると心臓がバクバクしてて
なぜか、涙が出てることもあった
(情けねぇな、マジで)
(こんな感情、誰にも見せたくねぇのに)
放課後、ふたりで帰ってるとき
河川敷の前でふと足が止まった
「なあ、ここ」
「ん?」
「なんか……変な感じがする」
「変な感じ?」
「この前、一緒に来たよな?」
「うん。夕焼けのとき」
「チョコバナナ食べながら、くだらない話して」
悠は、少し黙って空を見たあと、言った
「……ごめん。俺、それがうまく思い出せないんだ」
菜亜が、驚いた顔で振り向く
「……忘れたの?」
「わかんねぇ。覚えてる部分もあるんだけど
何かが、抜けてんだよな」
「夢みたいに、曖昧で…でも、確かに“あった”ってわかる」
「病院、行こ?」
「だいじょぶ。疲れてんだろ、たぶん」
そう言いながら
心の奥では、はっきりとわかっていた
これは
“ただの疲れ”じゃない
(何かがズレてる)
(確実に、俺の中の“何か”が)
でも
言えなかった
菜亜が心配する顔が
どうしようもなく、悲しくさせたから
(俺の中にある、なにかが壊れても)
(この時間だけは、守りたかった)
そう願ってた
願ってたのに――
(夜、夢を見た)
菜亜が遠ざかっていく夢だった
必死で名前を呼んでも
振り返ってくれなかった
「……菜亜……っ」
目を覚ました瞬間
頬が濡れていた
手を見た
震えていた
そして、カレンダーに目をやる
“ある日付”に、〇がついていた
(なんでこの日、印つけてたんだっけ)
(思い出せない)
心の奥で、確かに
“終わりの足音”が鳴っていた



