最後に名前を呼べたなら ―君の記憶と、永遠に―

放課後、悠が寝てた
机につっぷして、珍しく熟睡してる感じ

ちょっとだけ髪に触れてみる
ふわっとして、あったかかった

 

「……風邪ひくよ」

そう言いながらそっと肩を揺らすと

 

「……え?」

「なあ、今日なんで俺ここにいんの?」

 

一瞬、心臓が止まった気がした

 

「な、に言ってんの」

「……いや、悪い。なんでもねえ」

 

悠は笑って誤魔化す
でもその笑い方が、少しぎこちなかった

 

(やだ)

(そういう“違和感”がいちばん怖い)

(いつかこの人が、どこかに行っちゃいそうで)

 

 

それから何日かして
また、悠が変なことを言った

 

 

「俺さ」

「うん?」

 

「昔、お前とここ来たっけ?」

「え?……来たよ。こないだ」

「……そっか」

「覚えてないの?」

「いや、なんか……変な感じ」

 

「ごめん」

「最近、ちょっとおかしいんだ」

 

 

笑いながら
“おかしい”って言うのが、いちばん怖かった