最後に名前を呼べたなら ―君の記憶と、永遠に―

“変わったな、悠”

 

最近の悠は
ほんの少しだけ、わかりやすくなった

前みたいに全部隠してくる感じじゃなくて
時々、無言で“優しさ”をくれる

 

たとえば
重いドアをさりげなく支えてくれたり
自販機で自分の買ったジュースを無言で渡してきたり

 

「ねえ、ちゃんと言ってよ。“飲む?”って」

「わかるだろ、別に」

「わからないよ。わたし、察するの得意じゃないし」

「……そっか。じゃあこれからは、ちゃんと言う」

 

(そんなふうに返してくれるのが、嬉しかった)

 

 

(希衣)

「ねえ、最近のふたり、付き合いたて感ないよね」

(莉愛)

「わかる。もう安定しきった熟年カップル感ある」

(一華)

「いや、もう結婚しちゃえよ」

 

「……うるさいっ」

「顔が幸せ漏れてんの、ばれてるよー?」

 

そう言われて
頬が自然にゆるんでしまった自分が、恥ずかしかった

でも、同時に思ったんだ

 

(わたし、いまちゃんと“幸せ”なんだって)