最後に名前を呼べたなら ―君の記憶と、永遠に―

(あいつの横顔、たまにムカつくぐらい無防備)

朝、登校の途中
向かい風に前髪をふわっと揺らしながら
菜亜がイヤホンを片耳だけ外してこっちに差し出してくる

 

「ほら、今日のやつ。聴いて?」

 

「あー…お前のセンス、たまに信用ならねえけど」

 

「うるさいな、騙されたと思って聴いてみなって」

 

そう言って笑うとこが
ほんと、ずるい

 

音楽なんて
ぶっちゃけ俺にはBGMくらいにしか聞こえなかったのに

今はちがう

 

“この時間”が、音になる
こいつと一緒にいる今の温度が
メロディに乗って、頭に残ってく

 

 

「……なんでそんな嬉しそうに聴くの?」

「は?嬉しそうってなんだよ」

「顔が、ニヤついてる」

「うるせぇ」

 

(俺がどんだけ我慢してんのかわかんねぇくせに)

(手ぇ、繋ぎてぇなって思っても
自分からは出せないんだよ、バーカ)