「……蒼ってやつ、何者だよ」
屋上の風に吹かれながら
悠はスマホの画面を見つめたまま、呟く
「前はC組にいたけど、去年の夏に転校してきたってさ」
愛翔が答える
「目立たないタイプだったけど……最近、やたらと女子と話してる」
「で、裏でこんなアカウント動かしてるわけか」
悠はスマホをしまって
静かに言った
「引きずり出す方法、考えた」
「……どうすんだよ?」
「俺が囮になる」
愛翔が目を丸くする
「わざと“隙”を見せる」
「菜亜とケンカしてるっぽく見せて
“俺の気持ちが冷めてるように演出”する」
「蒼のやり方って、弱ってる方に近づいて揺さぶるだろ?」
「だったら、俺を“ターゲット”にさせりゃいい」
「……お前、それリスク高くね?」
「いい。俺がやる」
「もう黙ってるの、限界だから」
(数日後)
廊下の角
蒼がスマホを手にして立っていた
そこに、悠がわざと無言ですれ違う
「……あれ、悠くん?」
「……ああ」
「最近、菜亜ちゃんと……どう?」
「……」
「やっぱ、うまくいってないんだ?」
悠はそれに反応せず、ただ小さく鼻で笑った
「関係ないだろ」
「そうだけど、俺……菜亜ちゃんのこと、心配で」
「……」
「お前みたいなやつに、あの子似合わないと思ってた」
その瞬間、悠の目つきが変わった
「……そう思ってんなら、勝手に思ってろよ」
「でも一個だけ忠告」
「その口、どこまで信用させるつもりか知らねぇけど
嘘ばっか並べてると、そのうち首締まんぞ」
蒼が、無言になる
悠はそのまま踵を返した
でもその背後では
愛翔が、別角度から“動画”を撮っていた
“蒼が直接接触し、挑発を仕掛けてきた証拠”
そしてその夜――
愛翔がその映像と過去の投稿をつなげて、ある投稿を作りあげた
【まとめ】
“裏垢による特定人物への執拗な攻撃”
“ターゲットを揺さぶり、信頼を壊そうとする投稿の数々”
“接触時の音声付き証拠動画”
数時間後
蒼の裏垢は、突然非公開になり
フォローも一気に減っていった
“仕掛けてきたやつ”は
自分が見られる側にまわった瞬間、崩れ始めた
そして次の日――
蒼は、学校に来なかった



