図書室の奥
本を探していたら、後ろから声がかかった
「……あの、菜亜さん?」
振り向くと、見覚えのない男子生徒が立っていた
制服は同じだけど
クラスが違うのか、今まで話したこともない
「……えっと、ごめん。誰だっけ?」
「あ、ごめん。初めて話すよね」
彼は笑って
軽く頭を下げた
「俺、**斉藤蒼(さいとう あお)**って言います。C組」
「名前だけは聞いたことあったし……ずっと話してみたくて」
「……え、そうなの?」
菜亜は戸惑いながらも、警戒心は解けなかった
「別に深い意味じゃなくてさ
最近、いろんな噂とか聞こえてくるから」
「悠くんと、付き合ってるんでしょ?」
その言葉に
思わず肩が跳ねた
「……うん、まぁ」
「へぇ、そうなんだ」
彼はニコッと笑ってから
ふと視線をそらす
「……でもなんか、悠くんってさ
ああ見えて、意外といろんな子に優しいんだなって思って」
「俺、この前見ちゃったんだよね。悠くんが、別の子と一緒にいたとこ」
その言葉に
菜亜の表情が止まった
「あ……ごめん、変なこと言ったね。別に深い意味じゃないよ?」
「でも……気をつけたほうがいいかもよ」
その口調は、あくまでやさしくて
ただの“忠告”みたいな温度だった
でも
菜亜の中で、何かがざわざわと揺れた
「……ありがとう、教えてくれて」
「ううん、またどこかで」
蒼はそれだけ言って、静かに図書室を去っていった
(……あれは、なんだったんだろ)
言葉のひとつひとつは、ただの会話なのに
心の奥が、冷たく濡れたような感覚だけが残ってた
そのとき
机に置いてあったスマホに、通知がひとつ
【悠】
「今日、ちょっと話せるか?」
その画面を見ながら
菜亜は深く息をついた
信じたい
でも、揺れてる
そんな自分がいちばん嫌だった
本を探していたら、後ろから声がかかった
「……あの、菜亜さん?」
振り向くと、見覚えのない男子生徒が立っていた
制服は同じだけど
クラスが違うのか、今まで話したこともない
「……えっと、ごめん。誰だっけ?」
「あ、ごめん。初めて話すよね」
彼は笑って
軽く頭を下げた
「俺、**斉藤蒼(さいとう あお)**って言います。C組」
「名前だけは聞いたことあったし……ずっと話してみたくて」
「……え、そうなの?」
菜亜は戸惑いながらも、警戒心は解けなかった
「別に深い意味じゃなくてさ
最近、いろんな噂とか聞こえてくるから」
「悠くんと、付き合ってるんでしょ?」
その言葉に
思わず肩が跳ねた
「……うん、まぁ」
「へぇ、そうなんだ」
彼はニコッと笑ってから
ふと視線をそらす
「……でもなんか、悠くんってさ
ああ見えて、意外といろんな子に優しいんだなって思って」
「俺、この前見ちゃったんだよね。悠くんが、別の子と一緒にいたとこ」
その言葉に
菜亜の表情が止まった
「あ……ごめん、変なこと言ったね。別に深い意味じゃないよ?」
「でも……気をつけたほうがいいかもよ」
その口調は、あくまでやさしくて
ただの“忠告”みたいな温度だった
でも
菜亜の中で、何かがざわざわと揺れた
「……ありがとう、教えてくれて」
「ううん、またどこかで」
蒼はそれだけ言って、静かに図書室を去っていった
(……あれは、なんだったんだろ)
言葉のひとつひとつは、ただの会話なのに
心の奥が、冷たく濡れたような感覚だけが残ってた
そのとき
机に置いてあったスマホに、通知がひとつ
【悠】
「今日、ちょっと話せるか?」
その画面を見ながら
菜亜は深く息をついた
信じたい
でも、揺れてる
そんな自分がいちばん嫌だった



