最後に名前を呼べたなら ―君の記憶と、永遠に―

「……もう、帰ろうかな」

そう言いかけたときだった

 

「菜亜!!」

 

名前を呼ばれた瞬間
心臓が、一気に跳ねた

 

顔を上げると
校門の向こうから
全力で走ってくる悠の姿が見えた

制服の裾を乱して
息を切らしながら、鞄を片手に

 

「は、……っ、間に合った……」

 

目の前まで来た悠は
肩で息をしながら、ポケットをまさぐって

 

「……ほら」

そう言って
小さな箱を、無言で差し出してきた

 

菜亜はそれを、ゆっくりと受け取る

 

リボンをほどいて
蓋を開けると、そこには

名前の刻まれた
小さなネックレスチャーム

 

震えた
胸の奥から、なにかがあふれそうだった

 

「……なんで、これ……」

言葉が続かなかった

でも、悠はまっすぐ目を見てきた

 

 

「誕生日、おめでと」

 

その言葉は
どんな誰よりも、不器用で
でも、誰よりもまっすぐだった

 

 

「……遅くなってごめん」

「でも……ほんとは、今日だけじゃなくて」

「ずっと前から、お前に渡したくて……」

 

「……お前のこと、ちゃんと好きになってた」

 

 

菜亜の視界がにじんだ

まっすぐで
ぶっきらぼうで
不器用なその告白が

何よりもうれしかった

 

 

「……バカ」

涙をこぼしながら、そう言った

でもすぐに、口元をゆるめて

 

「ありがと」

そう伝えた声は
少し震えてて
でも、誰よりも幸せそうだった

 

 

夕焼けがふたりを照らしていた

もう何も、隠さなくていい

ふたりの想いは
ちゃんと届いた

 

 

そして
それがようやく始まる
本当の恋の一日目