放課後
昇降口へ続く廊下を歩いていたとき
ふと、曲がり角の先に見えた背中
見慣れた、少し猫背の立ち姿
悠
隣にいたのは
別のクラスの女の子だった
ふたりで、何かを見てる
スマホの画面か、メモか、紙袋か…
距離は近くない
でも
菜亜の中で、何かがぐらついた
「……なに、あれ」
口に出してしまった瞬間に
胸の奥が締めつけられた
そばにいた莉愛が
表情を固めて、そっと菜亜の手首を引いた
「なあ、見なくていいって」
「え……でも」
「違うよ、きっと……っていうか、たぶん悠くん、何か準備してんだよ。…でしょ?」
菜亜は何も返せなかった
信じたい
でも、目に入ってしまったその一瞬が
すべてを“悪い想像”に変えてしまう
心がざわざわする
風の音も、人の声も、全部うるさい
「……なんで」
小さく呟いた声は
誰にも届かない
悠が
見たことない顔で笑ってるのが
なんでか
一番きつかった



