最後に名前を呼べたなら ―君の記憶と、永遠に―

「……誕生日、もうすぐじゃん」

昼休み
教室の窓際で、希衣がぽつりとつぶやいた

 

「え?あ、ほんとだー!なあって……」

莉愛がスマホをいじりながら続ける

「10日後だっけ?16日?」

「15日だよ」
一華がすかさず答える

 

 

「えー、悠くんお祝いするのかな」
「え、してくれたらめっちゃアツくない?」
「てか、なあは期待してるでしょ?」

 

「し、してないし……」
菜亜は慌てて言い返したけど
自分の声がわずかに震えてるのを感じた

 

 

でも
内心は正直、ずっと気になってた

悠は最近、少しそっけない
というか、なんとなく“よそよそしい”気がする

 

目は合う
声もかけてくれる

でも
なんか、距離が微妙に遠い

 

 

「……バカみたい」

ひとりごとみたいに呟いた

別に、誕生日に何かしてほしいなんて
ちゃんと言ったわけじゃない

でも
たぶん、どこかで“期待”してたんだと思う

 

自分でも気づかないふりしてた
ちっぽけな願いが
今日になって、急に胸の中で暴れ出してる