最後に名前を呼べたなら ―君の記憶と、永遠に―



屋上の扉を閉めて
ふたりで階段を降りる

夕焼けの色が
校舎の窓を染めてて

影が長く伸びて
ふたり分の影が、やけに近かった

 

「……さっきの、ちゃんと覚えといてよね」

菜亜がぽつりと呟く

「何を?」

とぼけたように返す悠に

「“お前といると落ち着く”ってやつ」

そう言い返すと
悠はほんの一瞬だけ黙って

「……言ったっけ?」

とぼけ続ける

 

「言ったし!」

 

菜亜の声が少しだけ高くなって
悠は小さく笑った

 

 

階段の途中
ふと、悠の手がポケットから出た

菜亜の手と、あと数センチ

でも
どちらからも動かない

 

その距離が
もどかしくて、でも怖くて

 

「……手、冷たい?」

 

ふと菜亜がそう聞いたとき
悠は言った

 

「……さっきまでは、あったかかったけどな」

 

菜亜、反射的に顔をそらす

悠は、それを見てまた笑った

 

 

その瞬間

「おーい、悠〜〜!!」

下から声が響いた

 

「え、なにしてんの屋上とか行って」

莉愛の声だった

その隣にいる希衣も
こっちを見て、にやにやしてる

 

 

「え、なあ…またふたりで?!」

「てかさすがにこれは……もう、さ?」

 

菜亜の心臓がまた爆音になって
悠は舌打ち気味に息を吐いたあと

 

「……見られてんの慣れてきたな」

「や、やめてよ…!」

 

「お前が隠すの下手なんだよ」

「は!?あんたのせいでしょ!」

 

 

その言い合いを見ながら
希衣と莉愛がクスクス笑ってる

でも
菜亜の頬は赤く染まったまま

 

そのままふたり、並んで校門を出る

言葉は交わさなくても
今日のことは、きっと忘れない

だって
影がちゃんと、寄り添っていたから