やれやれ。
今日は早く帰れそう。
夕方、綾都がロビーまで下りると、出先から戻ってきたらしいラジオ巻きの美鳥が小ぶりなダンボールを抱えたまま言った。
「あ、綾都ー。
紫の傘の人が待ってるよー」
……バラの人じゃなくて?
外に出てみると、慶紀が透明な紫の傘をさして立っていた。
「ど、どうされたんですか?」
「いや、近くに来たので。
電話をかけてみたんだが」
「あっ、すみませんっ。
さっき、マナーモードにしてそのまま……」
「いや、それで。
電話するとき、今、していいものか迷ったので。
できれば、メッセージの送り先とか教えて欲しいんだが」
電話番号で送れるショートメッセージでもいいのでは?
と思いながらも、綾都はメッセージアプリのIDを教える。



