寝不足でお見合いしたら、結婚が決まりました

「なんで……、
 なんでお見合いなんてするんですかっ」

 女は突然怒り出した。

「私、ずっと白神さんのことがっ。
 だから、今まで、どんな優良物件も断ってきたのにっ。

 責任とってくださいっ」

 慶紀は事態についていけずに、ただ困り顔している。

 彼女は、責任をとれと言うわりに、ダッと走り去ってしまった。

 赤い車がすごい勢いで駐車場を出て行く。

「女たらしーっ!」
と叫ぶ声が風に乗って聞こえてきた。

「……窓、開いてるんですかね?
 教えてあげた方がいいですかね?」

「別にいいだろう」

 まだついていけていないらしい慶紀がぼんやりと言う。

「あの、あの方は――」

「仕事先で出会う人だ。
 いや、他にも何処かでよく会うな……」
と慶紀は考えている。

 あんなインパクトのある人なのに、何処で会ったか忘れるなんて……。

 これじゃ、私なんて、三日会わなかったら、完全に忘れ去られてしまうのではっ?
と綾都は恐怖を覚える。