寝不足でお見合いしたら、結婚が決まりました

 

 ホテルの一階。
 老舗料亭の大きな窓のある個室が見合いの場所だった。

 上品な味付けの料理が一品ずつ運ばれてくる中、綾都は皿の上のなにかで巻かれたエビをみながら、頭の中で、どうやったら、このあとの仕事が効率的に進むのか、何度もシミュレーションしていた。

「綾都、よかったわね。
 (かい)さんの従弟さんって聞いて、期待してたけど。

 ほんとうに素敵な方」

「ええ、美味しいですね」

慶紀(よしき)、すごい美人じゃないか。
 お前の好みのタイプだろう」

「ほんと、美味しいですね」

 噛み合わなさが噛み合っていた。

 綾都の叔母、花実と慶紀の従兄、櫂は、自分たちの言葉も頭に入らないくらい、見合い相手に集中しているのだと思い、微笑み合った。

「じゃあ、あとは若いお二人で」

 ねえ? と櫂が花実に言う。