慶紀は家の番号しか、櫂から聞いていなかったらしい。
見合い当日、なにかあったときのために知らされていたのが、それだったようだ。
「ちょっと出てこないか?
夕食はもう食べたのか」
「あ、はい」
と言った綾都は、
「そうか。
じゃあ、またにしよう」
と言われると思っていた。
「そうか。
ちょっと出てこないか?」
……予想と違う。
「お前の家の近くのコンビニで待ってる」
私の家の近くのコンビニ、どれっ?
「あのっ」
電話はもう切れていた。
あのなんか神々しいようなイケメン様をコンビニで待たせるとか、あってはならないっ。
綾都は誰かに切腹されられそうな気配を感じ、急いで支度して出た。



