帰りの車で慶紀が言った。
「実家に結婚の挨拶に行って、相手をかえろと言われるとは思わなかったな。
それも、俺じゃなくてお前が」
あはは、と綾都は笑う。
「なんだかお腹空きましたね」
「緊張してあまり食べられなかったか」
「食べられたんですけど。
お義父さまが勝つまでチェスをされたから」
時間が経って、またお腹が空いてきたのだ。
「……お前も途中で手を抜けよ」
「お義父さまは、私がわざと負けても、嫁に勝ったと言いふらして歩いたりされませんか?」
「言いふらしては歩かないかもしれないが、まあ言うかもな」
嫁と仲がいいと周りに見せるために、二人でチェスをやった話をし、まあ、負けた話もするだろうと慶紀は言う。



