寝不足でお見合いしたら、結婚が決まりました

「そういえば、前からでここに出入りされてたんですね」

 あんな風に大歓迎する女性がいるほど、と思いながら綾都は訊いた。

「そうだな。
 でも、お前とは出会わなかったな」

 広いからな、この会社、と言ったあとで、慶紀が言う。

「だが、お前をチラと見たことがあると思い、考えていたんだが、思い出したぞ。

 二、三年前、ここの大会議場に呼ばれてきたとき、端の方に値札をつけて座っていた」

「名札です」

「どうりで名前に覚えがあると思った」

 お願い、人の話を聞いて。

「あのー、先ほど、私のことを結婚相手だとみなさんに言ってらっしゃいましたが」

「嘘は言ってないだろう。
 恋人だとか言ったら嘘だが、結婚相手なのは確かだ」

「あの、でもですね。
 その話、私たちがうっかり断りそびれているうちに、勝手に進んでただけですよね?

 白神さんとしては、どうなんですか?」

 どうもこうもない、と慶紀は言う。