綾都の方を振り向き、なにかをガーッと言おうとしたらしい口の動きを見せた浜子に、侑矢が言う。
「あ、村上さん。
黄色の付箋が欲しいんですけど、いつものやつ」
そこでようやく、浜子は侑矢に気づいたような顔をした。
長身の侑矢に上から微笑みかけられ、浜子は照れたように、
「あ、あのちょっと大きめのやつ?」
と訊き返している。
「そうそう。
さすが村上さんですね。
すぐわかってくれるから、いつも助かりますよ~」
「えっ?
やだ、そんなことないよ~っ」
浜子は軽く慶紀に頭を下げると、機嫌良く侑矢と総務に向かっていった。
侑矢が振り返り、口の動きだけで、
『アトデ ナニカ オゴレ』
と言う。
……なんかたっぷりおごってやろう。
ありがとう、侑矢、と心の中で深く感謝したとき、慶紀が言った。
「今、暇か?」
仕事中なので、暇なわけはない。



