靴が乾くまでの間、三人はマンションの前庭でまったりと時を過ごしていた。 「いつも忙(せわ)しなく時間が流れていくから、こういうのもいいな」 と慶紀が言う。 「そうですね」 「あ、綾都。 靴に緑の虫がついてるわよ。 あいつじゃないの? カメ」 遠目に靴を見ながら秀子が言う。 カメムシのことのようだ。 慶紀がそちらを振り返り、 「いや、羽根がある」 と言った。 カメムシにも羽根があるが。 そういう普段は閉じている羽根ではなく、ハチやハエなんかのような感じに羽根があるというのだろう。