下の水道で洗ってくるか。 慶紀は靴を手にエレベーターに乗りかけて、迷う。 この靴を―― この靴をこのままにするか、捨てたら、綾都は家に帰れないのでは。 家に帰れず、そのまま、うちにいるのでは……。 慶紀はとりあえず、下に下りて、水道で汚れを流した。 もう履けないこともない。 だが、その履けないこともない靴を綾都に返したら、彼女はこれを履いて帰ってしまう。 シンデレラに靴を返してはならない。 慶紀は綾都の靴を何処かに隠そうかと考え、その靴を掲げ持ったまま、じっと見つめていた。