寝不足でお見合いしたら、結婚が決まりました

「……実はその、踏んでしまいまして」

「なにを?」

「ね、猫のフンを……」

 靴がすごい匂いがしている。

 猫のフンというのは、何故、こんなにも臭いのか。

「この立派な車に……
 いや、立派な車じゃなくても、この靴ではちょっとっ」

 慶紀が笑い出した。

「買うか、今の家」
「え?」

「だって、運がついてそうだろ?」

「そ、そうですね……」

 結局、パンフレットの入っていた袋に靴をつめ車に乗った。

 臭いことには変わりなかったが。

 窓を全開にして乗っているので、綾都の長い髪がはためいて、生き物のように、あちらこちらに飛び回る。

 顔に毛束がかぶさり、うわっ、と言うと、
「大丈夫かっ?」
と慌てて慶紀が訊いてくる。